今年もうなぎ、襲来。
鰻屋はおろか、蕎麦屋から牛丼屋からコンビニ、スーパーまで猛烈にプッシュされるアブラギッシュなウナギ目ウナギ科の高級淡水魚、「鰻(うなぎ)」。
おいしーよね。精がつくし。
それはゲンナイヒラガのステマにやられていますね。
いやいや、堂々たるダイレクトマーケットです。
一説によれば江戸時代発明家で名高い平賀源内が、ある鰻屋に夏に売り上げが落ちるうなぎをどうにかして欲しいと頼まれ、夏にみんなが食べたくなるような斬新なキャッチコピーを考案したのが始まりとされています。(諸説あり。一次資料などの明確な証拠はなく、伝承の一つとも言われている)
生年1728年~1780年没。
江戸中期の学者、作家、芸術家、発明家。讃岐高松藩の足軽の家に生まれる。元の姓は白石。
幼少時から秀才の名が高く、様々な学問を治めるため京都、大阪、江戸で多くの知識人と交流し藩の職を辞したため奉公構(他所での仕官を禁ずる触れ)になり、浪人として長く江戸の町家住まいをした。
学問、芸術、文筆活動など多岐に渡り活動し、市政の天才、異才として知られていた。発明家としても知られ、オランダ製の「静電気発生装置エレキテル」の修復や、実用化には至らなかったものの気球などの研究をしていたとされ、「日本創製寒熱昇降器」という温度計も製作した。
コピーライターの奔りとしての活動もいくつか行っており、その一つがこの鰻屋の夏季限定キャッチコピーではないかと言われている。
それが『土用の丑の日』。
このキャッチコピーのおかげで暑い夏に避けられていたうなぎの売り上げが嘘のように上がったそうで、これを真似て他の鰻屋も同じフレーズで(その当時は無形資産の権利という概念が希薄だった)キャンペーンを打つようになりました。
和製レオナルドダビンチとも言われる平賀源内のセンスに脱帽ですが、一体これはどういった意図、由来からつけられたのか。
土用の丑の日の意味と
うなぎがなぜそれに当てはまったのか解説します。
土用の丑の日ってどういう意味なの?
土用の丑の日の「土用」とは中国より伝わる五行思想に基づく季節の変わり目に当たる雑節の一つで、
- 立春
- 立夏
- 立秋
- 立冬
の四季の間の18日間のうち1日か2日が「丑の日」に当たります。
この雑節は干支十二支で構成されていて、丑の日そのものは春夏秋冬年中あることになりますが、土用の丑の日は夏のみを指すのが一般的です。
でもキャンペーンとしては土用の丑の日だけ売り出しているわけじゃないよね。
まあそこは商売なんでお店はなるべく長くたくさん売り上げたいですからね。
要するに夏には栄養価の高いうなぎを食べて元気出しましょう、っていうのがこの古き伝統のキャンペーンの趣旨なのですが。
平賀源内のうまいところは、土用の丑の日はもともと
‟「う」の名のつくものを食べる”
という習慣があったところを利用した点です。
古くから食されていたのは瓜やうどんだったそうで、うなぎは特にラインナップに入ってなかったのですが、そこを鰻屋の看板に大きく、
「本日、土用丑の日」
と掲げさせてあたかもうなぎも丑の日に食す食べ物であるかのように宣伝させたのが始まり。
こうして土用の丑の日=うなぎという図式が定着し、今日も多くの飲食店やスーパーが夏にはうなぎ!と大々的に売り出しています。
本当に夏にうなぎを食すのが正解なの?
そうと決まったら今日はうなぎっス!プリプリのうなぎを食べて精をつけるっス!
あー・・・それがねえ・・・
実はうなぎは冬の方がでっぷりと脂がのって旨いとされています。
天然うなぎが旬なのは10月から12月で、通のうなぎ好きはこの時期に獲れるうなぎを目当てに食べるそうです。
元来夏にうなぎが売れなかったのは脂っこく夏には合わないというのもありましたが、1番の理由はうなぎの旬ではないから冬に食べるほどには美味しくないというのが理由です。
うなぎは「夏に食べるのが良い」とされている理由
あえて旬でないうなぎを夏に食べるメリットは暑気避けとなる栄養素が充実しているというのが挙げられます。
<うなぎに含まれる主な栄養素>
- ビタミンA・・免疫力向上
- ビタミンB群・・・疲労回復効果
- ビタミンD・・・骨や歯を丈夫にする
- ビタミンE・・・血液をきれいにする
- ミネラル・・・体調を整える
- タンパク質・・・骨や筋肉の元となる
そのほか、DHAやEPAなど魚類に豊富なオメガ3系脂肪酸を蓄えていて、健康に必要な栄養の摂取に優れています。
冬に美味しいうなぎですが、夏バテしやすい時期に摂取することにより、暑さに負けない栄養をとって暑い夏を乗り切るという知恵が昔からあったようです。
ただ現代の食生活において、昔より栄養状態のいい今の時代には日常的に摂取できている栄養素ばかりなので、この季節にうなぎを食す必要性は薄れているとは言われています。
しかし細かいことはどうでも良いのです。美味しくて贅沢なものを食せる言い訳があればどんどん利用してしまいましょう。
また、養殖ウナギが市場流通品のほとんどである現在、季節にこだわる必要なく美味しいうなぎを食べれるようになっているのであまり旬は関係なくなっているというのも実情です。
うなぎの生産量が多い地域ってどこ?
毎年夏「土用の丑の日」キャンペーンが打たれるうなぎですが、そんなうなぎを美味しく食すためにどこに行けばいいのでしょうか?
うなぎ生産文化が盛んな地域や県といえば、
養殖うなぎ生産量№1の鹿児島県。
鹿児島は約40%の養殖ウナギのシェアを誇っており、当然ながらうなぎを食す文化も盛んです。主な生産地は大隅半島で、ミネラルの含んだ名水と温暖な気候が天然シラスウナギが大量にとれる主な理由となっています。
次いで2位が愛知県。こちらはひつまぶしでも有名なうなぎ文化老舗の地。
3位は宮崎県、国産の養殖うなぎはこの3県で全国80%の生産量となるそうです。
うなぎといえば静岡は浜松という印象をずっと持っていたけど違うのね。
その印象は間違っていません。養殖うなぎ発祥の地は静岡県であり、明治時代に初の養殖を成功させています。
生産量は年々縮小しているものの、静岡県だけでも全国で10%ほどの生産量はあり、まだまだうなぎ文化の老舗としての存在感は大きいです。
独断と偏見で選ぶ鰻屋の多い地域
うなぎ生産はともかくとして、鰻屋が多くある地域や県は一体どこなのでしょう。
養殖の三大地域である鹿児島、愛知、宮崎はもちろん美味しい鰻屋も多いことで有名ですがその他を挙げるとするならば。
旅行等の特集で必ずプッシュされる地域は言わずと知れた
静岡県浜松市。
同県の狩野川などで天然うなぎも獲れ、井水うなぎブランドで知られる養殖うなぎの巨大生産地とも近く、何より旅行雑誌等でグルメの第一等としてクローズアップされることの多い場所です。
他には高知県。
四万十川、仁淀川で獲れる天然うなぎが名産とされ、高知旅行の際は必ず押さえておきたいグルメの一つとして挙げられます。
三重県津市も鰻屋が多いことで有名です。かつて養殖も盛んでしたが、現在は養殖場はなく、かわりに鰻屋の文化は残っています。伊勢うどんと共に食べておきたいグルメの一つです。
他にも岐阜県、長野県、滋賀県、福岡県、熊本県、大阪府など、地方に旅行の際にはうなぎもグルメの対象になるような盛んな都道府県が沢山あります。
関東近郊でうなぎが盛んな県は?
チバニアンがひいきをさせていただくならば、我が地元千葉県も鰻屋が多い県として有名。
古くから利根川の天然うなぎは庶民に愛されてきたそうです。
千葉県成田市の成田山へと向かう参道は多くの鰻屋が並んでいます。参道の他のお店を見つつ成田山新勝寺の行き帰りに立ち寄る鰻屋は絶品です。
また、香取市佐原の町は小江戸と呼ばれ、城下町の雰囲気を残しつつ江戸文化の中に鰻屋が多く点在しています。
小江戸といえば埼玉県川越市もうなぎのメッカとしてあまりにも有名。
茨城県も利根川に隣接している関係で鰻屋が沢山あります。
食の宝庫、東京都も江戸前の鰻屋が沢山あり、柴又などの門前町には参拝客を引き寄せる下町の良店が数多く並んでいて、神様よりもうなぎを拝みたくなるほどです。
結論:せっかくだからこの夏は土用の丑の日キャンペーンに乗っかって美味しいうなぎを食べてしまおう!
商魂たくましい鰻屋の戦略にあえて乗っかって夏の間にうなぎ三昧というのもあり。
最近は安く食べようと思えば、吉野家やすき屋、なか卯などの牛丼屋や、
回転寿司でも握りや丼がメニューに載っていて、そこまで財布の中身を気にせずちょっとだけ贅沢することができる機会が増えています。
スーパーや通販で購入して自宅でオリジナル鰻重を作ることもできますしね。
今年は特に猛暑の模様。
夏バテを乗り切るためにも、美味しいうなぎをたっぷりと、お安いお値段で家族みんなで楽しむのもいいですし、
夏休みの観光がてら、気晴らしに名所名店へ高級うなぎを頂きにいく「土用の丑の日グルメツアー」なんていうのも楽しい思い出になるのではないでしょうか。