千葉県の最北東に銚子電鉄というローカル線なのにそこそこ名の知れた鉄道がある。
路線距離6．4㎞余り。駅数にしてわずか10駅の小さな鉄道会社。
地方の公共交通機関の例にもれず、経営が厳しいのに妙に元気がある鉄道会社だ。
YouTubeで自虐的な公式チャンネルを開設したり、
自社の企画販売で妙ちくりんな土産物を販売したり、
どこか変で、滑稽で、ズレている。
そんな吹けば飛ぶような貧弱な万年赤字体質の鉄道会社が、最近わずかに黒字になったそうだ。
なりふり構わないガムシャラな経営が実を結び、鉄道マニアのみならず「銚子電鉄ファン」が少しずつ増えこの地に足を運ぶようになってきた。
七転八倒しもがき苦しみながら、時代の波に抗おうとジタバタする彼らの姿は、庶民にとっては時にヒーローに見えることがある。
見れば元気をもらえるに違いない。
見てみたい。乗ってみたい。
またそんな思い付きを・・・
千葉最北東の町「銚子」へと旅立つため、前日急遽購入した「特急しおさい」の特急券を握りしめ列車に駆け込んだ。
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千葉県最北東の町「銚子」を日帰り観光
というわけでやってきました。JR銚子駅。
総武本線、成田線と私鉄である銚子電気鉄道線を連結する本駅。
気分的に特急電車でやってきたせいでもありますが、駅構内ですでに漁師町と観光街の雰囲気がそこはかとなく漂っています。
そういえば醤油の町でもあったな。
ヒゲタ醤油やヤマサ醤油のおひざ元ですね。
製造業、加工業も何気に盛んな街です。さっそくお土産候補見っけ。
とにもかくにも銚子電鉄の乗り換え場所を拝むべく、2番線の先端へと向かいます。
ローカル線ならではですが、始発である銚子駅には銚子電鉄単独の駅舎は設けられておらず、JRのホームを伸ばすような形で変則的に電車を乗り入れるようにしています。
駅舎のようなゲートは設けられていますが、基本無人でありここ銚子駅構内での切符の販売はありません。
銚子発の場合、切符は乗車したあと電車の中で車掌さんから購入する形になります。
これがその乗り換え場所。
うむ、満足。じゃ始発の銚子駅を確認したところで引き返そうか。
え？ちょっと待つっス！ここから乗らないっスか？
乗らないっス。
初乗りはここ銚子駅ですが、銚子電鉄オリジナルの単独駅舎であり本社が隣接している
仲ノ町駅
が隣駅にあります。
ここに電車車庫があり、本来の銚子電鉄の機能を持っている最初の駅舎といっても差し支えないでしょう。
何よりここでは駅舎から切符が購入でき、1日乗車券である「弧廻手形」も入手できます。
電車内でも購入できますが、せっかくの旅の切符が電車内で車掌さんからの購入ではなんとく味気ない。
出発までの時間も有り余ってます。せっかくだから隣駅までの銚子の町を満喫しましょう。
というわけで、銚子の最初の冒険は電車でGO!ならぬ徒歩でGO！するぞ！
元気だなオッサン。まあ仕方ないから付き合いますよ。のんびり行きましょ。
銚子電鉄最初の単独駅舎仲ノ町駅にゆく
単線の線路沿いをテクテク歩く。
しばらくすると微かな騒音と醤油のにおいがしてきました。
仲ノ町駅のすぐ近くにヤマサ醬油の工場があります。
おおっと？
仲ノ町駅を素通りするところでした。
これが本社併設の駅舎？
一見零細企業の町工場か個人商店のようなたたずまい。鉄道会社の本社が併設されてこの大きさです。
看板の仲ノ町駅とともに何か大々的に書いてあります。「パールショップともえ」。
・・・・・・パチンコ？
これについて解説します。銚子電鉄は10駅ありますがそのすべてに愛称（または愛称という名の宣伝）が名付けられています。
| 駅名 | 愛称（ネーミングライツ） | よみがな |
| 銚子駅 | 絶対にあきらめない 古着 de ワクチン 日本リユースシステム株式会社 | ちょうし |
| 仲ノ町駅 | パールショップともえ | なかのちょう |
| 観音駅 | 金太郎ホーム | かんのん |
| 本銚子駅 | 上り調子 本調子 京葉東和薬品 | ほんちょうし |
| 笠上黒生駅 | 髪毛黒生（かみのけくろはえ） | かさがみくろはえ |
| 西海鹿島駅 | 見えないことで、未来を拓く アシザワ・ファインテック株式会社 | にしあしかじま |
| 海鹿島駅 | 綿谷 岩雄 | あしかじま |
| 君ヶ浜駅 | ロズウェル | きみがはま |
| 犬吠駅 | 最高（315）だぜ！銚子！アイドルマスター SideM | いぬぼう |
| 外川駅 | ありがとう | とがわ |
これは経営改善の一環による施策で、2015年より銚子電鉄の命名権（ネーミングライツ）を販売しさまざまな出資者に愛称をつけてもらっているという経緯があります。
ユニークな愛称だったりどこかキャッチコピーっぽい内容だったりするのはそのためです。
銚子電鉄の経営の歴史を紐解くと、この手のなりふり構わない奇抜な手法がたくさん出てきます。これもこの鉄道会社の強烈な個性の一つ。
ガラガラと引き戸を開けて駅舎に入ってみる。
これまたなんとレトロな・・・・・
小さな待合室にこれでもか、と言わんばかりに所狭しと銚子電鉄の関連物が掲示してあります。ちょっとした「銚子電鉄博物館」です。
ショーケースに銚子電鉄グッズ見本品、ガチャガチャにコラボポスター。関連本。
グッズだけでなくお土産物も（駅員が）売っています。おなじみ濡れ煎餅やまずい棒など。
ちょっと話題になったC級パロディー映画「電車を止めるな！」のポスター。
犬吠駅で売っているたい焼きやまずそーだ（ただの炭酸飲料）の宣伝もしています。
濃すぎる銚電成分。やっぱりこっちに来て正解でした。時間をかけてゆっくり見れます。
切符売り場にて1日乗車券「弧廻手形」を購入。
思ったよりでかい。
折りたたみできるよう溝が入ってます。お値段700円也。
この手の乗車券お約束のお得な割引付きです。できる限り使っていこうと思います。
初めての銚子電鉄乗車
狭くて個性的なホームに時間通り電車がやってきました（写真取り忘れた）
結構混んでる。
立っている人がちらほらといるくらいには席が埋まっています。それよりも目を引くのは
事前リサーチで知ってはいましたが、目の当たりにすると一層やり過ぎ感にドン引きします。
掲示物も銚電関連一色。洗脳されてしまいそう。
さあ全長6.4㎞、時間にして22分の単線電鉄の旅の始まりです。
目指すは犬吠駅。
時間があればすべての駅を乗降したいところですが、なにせ電車の時刻表が外川方面に限れば1時間に1本コッキリ。
銚子方面の電車を使って上り下りと往復すればある程度は乗降可能かと思いますが、銚子電鉄以外にも訪れたい観光名所があるので今回はいけるところまで。
とりま目指す駅は犬吠駅なのだ。
犬吠埼灯台っスね！自分も見てみたいっス！
そうこうしている間に電車は次々と駅に停車していきます。
今回乗降しなかった銚子電鉄各駅の簡略紹介
本銚子駅（上り調子 本調子 京葉東和薬品）
2017年24時間テレビでタレントのヒロミが駅舎をDIY改装したことで一気に注目を集めました。現在は無人駅。
上笠黒生駅（髪毛黒生【かみのけくろはえ】）
ここより銚子ポートタワー、ウォッセ21、銚子漁港などにアクセス可能ですが徒歩だと若干遠い。銚電変電所あり。
西海鹿島駅（見えないことで、未来を拓く アシザワ・ファインテック株式会社）
取り損ねたため写真なし。
特に観光名所はありませんが近くに銚子市市民センターがあり、地元の人のための駅である側面が強いです。キャベツ畑が広がりのどかな風景です。無人駅でトイレがないので注意。
海鹿島駅（綿谷 岩雄）
関東最東端の駅。特別なランドマークはなし。海岸線に近いので君ヶ浜駅とともに海岸へのアクセスに最適です。現在無人駅。
君ヶ浜駅（ロズウェル）
最も平均乗車人員が少ない駅舎がない駅。非公認駅長である猫がいたそうですが数年前にお亡くなりになったそうです。無人駅。
さて、電車はそろそろお目当ての駅へと到着するようです。
ここが犬吠駅（最高【315】だぜ！銚子！アイドルマスター SIde M）
銚子電鉄最大の規模を誇る駅であり、犬吠埼エリアの観光の要です。
ちょっと年季が入ってますが、外見も中身も立派な洗練された駅舎になってます。
ごめんやっぱちょっとクレイジー。
お土産物屋も結構な規模です。ちょっと早いですがここで少し購入していきます。弧廻手形提示で100円引き。
おお、濡れ煎。
しっとりとして醤油がよく染みている柔らかいお煎餅。
硬い煎餅をバリっとやるのがいい！という人にはどうかな、と思いますが、硬くてぱさぱさしているから煎餅が苦手とか、歯が悪くて噛めないというお年寄りには優しいお菓子。
・・・どういう頭の構造をしていたらこういった商品を思いつくのだろう。
自虐風必死経営は銚子電鉄の十八番ですが完全に同意。しかし木っ端ブログを運営していると自認している自分は少しだけシンパシーを感じてしまう。
お土産を購入したところでいざ犬吠埼灯台へ向けて出発！
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世界灯台100選の犬吠埼灯台に登る
駅から15分程度の距離にある、銚子屈指の名物犬吠埼灯台にやってきました。
2020年に国の重要文化財に指定されたAランク保存灯台は世界の灯台100選、日本の灯台50選にも選ばれ、塔頂までの高さは31.3m。青森県の尻屋崎灯台に次ぐ日本第2位の高さになります。
1872年に着工し、2年後の1874年竣工。
灯台は長らく海の防人、案内人としてだけでなく気象予報など様々な活動をしてきましたが、2000年代初頭を皮切りに科学技術の進化とともにその役割をどんどん終えていきます。
現在も航路標識としての機能を果たしているものの、歴史の文化遺産としての側面も強くなり参観灯台として一般に広く公開されている歴史的価値のある建造物です。
灯台前のテラスや飲食店も充実しています。
後で海鮮の昼めしだな。ワクワク。
相も変わらず花より団子ですね。
入場料300円。灯台のほか資料館や霧笛の展示館等もあるようです。
狭い階段を上って見晴らし台まで出ます。人が多い時は譲り合って進みましょう。
いい眺め。海の色が凄く綺麗です。
しかし風が強い。涼しいのはいいですがものが吹き飛ばされたりしたら大変です。それに人もそこそこ多いので一通り一周したら即退散。
他の展示品も見ます。が長くなるので割愛。
お昼はこちらのお食事処「あわび屋」でいただきます。
まな板定食2000円。豪華。
とっても美味しかった。満足です！
ではエクストリームで次いくっス！電車の時間も記事の文字数もおしてるっス！
というわけで巻いて次行きます。
ここより犬吠駅方面に戻って線路を渡り、反対側の小高い丘の上にある地球の丸く見える丘展望館に向かいたいと思います。銚子で一番高い場所。
そこから大回りに歩いて銚子電鉄最後の駅「外川駅」から電車で帰路に就く予定です。
再び徒歩でＧＯ！地球の丸く見える丘展望館へ
大きくうねった道路を黙々と登っていきます。
犬吠駅から徒歩20分余り、やっと着きました地球の丸く見える丘展望館。
入館料420円。弧廻手形を提示すれば50円割引となります。
疲れたー。暑かったー。
お疲れ隊長。景色を見る前に一旦休憩しましょう。
2階のお土産物屋に併設されているカフェスペースでしばしの休憩を取ります。
銚子サイダーに醤油饅頭。
醤油饅頭は甘みの中にほのかな醬油の風味。とっても美味しい。
サイダーは、まあ普通ですｗでも疲れた体にしみました。
体力が回復したら、屋外展望スペースへ。
360度海のパノラマ絶景。
なかなかの眺望でした。他にこれといったものはないんですが、いい景色を見つつお茶や食事をしてお土産買って帰る。そんなのんびりした観光ができる施設です。
銚子電鉄最果ての駅「外川駅」を見る
十分堪能して本願の目的地である外川駅へ。
外川駅の愛称「ありがとう」の看板が見えてきました。
これが銚子電鉄最終の駅か。ありがとう！外川駅。
レトロながらも結構きれいでしっかりした駅ですね。
ポストの横の留置線には使われなくなった列車が置かれています。内部無料公開されているとか。（時間なかったので見ていませんが）
駅舎の中には待合室があり、ベンチと座布団が置かれています。
コインロッカーなどもあり自販機やトイレもしっかりしていて、こじんまりとした駅のわりに一通り充実した環境。駅の前には有料ながら直営の駐車場もあるようです。
駅員も常駐していて（早朝夜間は無人）出札口には商売っ気たっぷりの張り紙やお土産物コーナーも。
レトロなローカル線の集大成、お手本のような駅舎です。文句なし。
電車もやってきたのでいざ、銚子方面に。
相変わらず色々おかしい車内。
つり革とか使わせる気ないですよねこれ。
さて、思ったより時間ができたので直接銚子駅までは戻らず、
観音駅（金太郎ホーム）で降り、5分ほどの距離にある十一面観音菩薩本尊、円福寺、通称飯沼観音に参詣しに行きたいと思います。
開基は810年～824年。弘法大師が開眼したといわれる歴史あるお寺で、智山派系真言宗に属します。
成田山新勝寺と同系列ってことなのかなこれ。
表向きは単立（無所属）ってことになっているっス。といっても宗派は同じっスからあくまで法制度上のことって話っスね。
政治家で言えば無所属（○○党推薦）みたいな。
境内には新造ながら33m余りある五重塔もあり、本堂の横にはそこそこ大きい銚子大仏もあって観光名所としても有名なようです。
仁王門より早速参詣。
・・・・・・・
・・・・・・・
うん、立派な五重の塔。大仏。しかし、
何つーか、今回は神社仏閣は薄口醬油ね。
銚子電鉄が濃口醤油過ぎましたね。
普段ならウキウキしながら参詣するところですが、今回は薄口醤油のごとく淡白に。
お詣りを済ませて帰ります。
すまん飯沼観音。あなたはちっとも悪くない。
あんな濃口な銚子電鉄がすべて悪いんや（なすりつけ）
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観音駅に戻り最後に向かうは始まりの駅「銚子駅」へ
濃口醤油の一族、観音駅に戻ってきました。ここから銚子駅へと向かいます。
やっぱいろいろ濃いよなあ。
ちょっと複雑な思いを抱えながら最後の電車旅を楽しみます。
あっという間に銚子駅へと到着。
ここのゲートが銚子電鉄始まりの場所。
「絶対にあきらめない」、か。
ありがとう銚子電鉄。今日は存分に銚子の町を堪能したぜ。
今まで何度も旅行に行って僻地の鉄道を幾つも見て、乗ってきました。
どのローカル線も赤字を抱えながら必死に運行して、地元の住民や地域に貢献し、また支えられています。
銚子電鉄はそんな赤字鉄道の希望の星です。
どんな経営が苦しくとも明るく前向きなその姿は多くの人の心を打って、2021年、22年度決算にて2期連続の黒字へと転換しました。
「絶対にあきらめない」スタートと、「ありがとう」のラストのメッセージ。
そして二つを紡ぐ10個の数珠つなぎのライン。
創業100年の歴史ある微弱な鉄道会社。今年の銚子電鉄の夏もやっぱりアツかった。
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※アフィリエイトでも案件でもございません（銚子電鉄にそんな余裕はございません）
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