いよいよ開幕、新NISA元年。
株価の変動はさほどではありませんが、新年早々ドル円の激しい値動きがあり波乱の幕開けを感じさせる様相を呈している為替市場。
今年はFOMCによるアメリカ金利利下げの動向や、去年後半からの株価上昇の反落も懸念されますが、我々NISA民は心穏やかに淡々と資産を積み増していきましょう。
・・・・そういえば前から聞こうと思っていたんですが。
うん?
つみたてNISAは頑張っていたのは知っていますが、iDeCoはどうなんでしょう?
ああ、これのことね。
我々庶民に選択を許されたもう一つの資産運用非課税制度iDeCo。
NISAとはいくつか性質が違うものの、資産形成において優遇されているのは間違いなく、誰しもが検討するに値する制度です。
結論から言ってしまうのなら、
新NISAに投資入金してなお余力がある収入や資産を有しているならば必ず始めておきたい制度といえます。
今回は神制度に進化した新NISAと
資産運用制度としては少しクセのあるiDeCo
資金的なやり繰りにおいて一体どちらを優先した方がいいのか
自分なりに比較検討した結果、どう言った結論を得たかの記事を書いていきたいと思います。
「投資」ではなく個人「年金」制度のiDeCo
iDeCo(個人型確定拠出年金)は将来に備えて自分で作る私的年金(個人年金)制度のことです。
新NISAは少額投資非課税制度であり、純粋に証券口座にて自分で資産管理できる「投資」ですが、
iDeCoは国民年金や厚生年金同様、毎月の掛け金を拠出して原則65歳まで積み立てられる「年金」となります。(受け取りは原則60歳以降に可能となる)
2002年3月より始まったiDeCoは、2022年3月末までに加入者数239万人余りまで増加していっています。
※SBI証券HPより引用。出所:運営管理機関連絡協議会。確定拠出金統計資料(2002年3月末~2022年3月末)
iDeCoって年金なんですね。個人年金ってどういう制度なんですか?
まずiDeCoはNISAのような投資と違い年金扱いなので、所得からの控除対象となる。国民年金や厚生年金と同じだな。
つまり月々定額を積み立てることによって、その金額に応じて所得税住民税が軽減される節税効果があります。
iDeCoは節税に関して強力な効果があり、iDeCoの節税メリットは以下の3つ。
- 積立時:所得税、住民税が軽減。
- 運用時:運用益の税金が非課税。
- 受取り時:受取り時の税金が軽減。
これらのメリットを一つずつ説明します。
iDeCoの積立時、運用時のメリットとは?
①の積立時に関しては積立した金額がそのまま控除対象となり、所得から所得税住民税が減額されます。
通常社会保険料の他にも保険控除や医療費控除、住宅ローン控除、ふるさと納税等いろいろ控除や節税(ふるさと納税制度は厳密には節税ではないものの実質的な節税行為)方法がありますが、
②で触れている通り、iDeCoの特徴として決められた金額をただ納める公的年金と違い、自分で選択した金融商品に積立して、運用益も非課税のまま受け取ることができるメリットがあります。
純粋に投資リターンが返ってくるという意味においては運用益が非課税というシステムも相まって、かなり強力な節税効果、運用効果があるというのが他の控除対象と大きく違うところです。
非課税の運用益と節税効果の差額を考えると数字以上の利益が最終的に帰ってくるな。
ある意味運用益のみ非課税のNISAよりえぐい儲けになるっスね。すげー。
ちなみに一例として会社員35歳からスタート、年収500万円、毎月の掛け金23,000円、運用利回り3%でシミュレーションしてみると、
※SBI証券HPよりiDeCo資産シミュレーション。企業年金なし。扶養配偶者あり。子供16歳未満2人の家族構成想定条件で算出。
掛金元金8,280,000円。
運用結果総額13,310,092円。
掛金全額所得控除で年間45,400円の節税、30年間積立で計1,362,000円。
運用益は5,030,092円に対して本来かかる20%の税金1,021,863円は非課税。
差額としておおよそ640万円が得となります。税制優遇効果としては約238万円。3%運用は現実的な数字ですからiDeCoを積立するメリットは十分あると考えられます。
iDeCo受取り時のメリット
iDeCoは出口戦略である受取り時にも税制優遇があります。
積立による資産の受取りには2つ選択ができ、その際の税制優遇も2通りあります。
- 一時金受取りによる退職所得控除
- 年金受取りによる公的年金等控除
法律で定められている通り、一時金(退職功労金)の控除計算は会社員の場合勤続年数(掛金の拠出期間)によって定められています。
- 20年以下・・・40万円×勤続年数(最低80万円)
- 20年以上・・・800万円+70万円×(勤続年数-20年)
が退職所得控除の計算の数式となります。
(例:大卒60歳定年勤続38年の場合、800+70×(38-20)=2,060万円が控除)
年金受取りの場合、分割で支払われ雑所得扱いとなり公的年金等控除が差し引かれます。
他、メリットとして加入者死亡時一時金として死亡保険代わりに受取人指定して遺族に残せること。障害年金としても機能するので保険として考えることも可能です(ただし死亡一時金は生命保険のような保険非課税枠があるわけでなく、全額相続税の対象となるので注意)。
また借金などの滞納の際、それまでに積み立てたiDeCoは資産差し押さえの対象外として保全されることなどが挙げられます。
新NISAに負けず劣らずの神制度じゃないですか。
うん、ではiDeCoのメリットはこのくらいにして、デメリットを説明しようか。
税制優遇された個人年金iDeCoのデメリットは4つ
これほど税制優遇されているiDeCoならば、運用益が非課税なだけのNISAよりも優先して行うべきと思う人もいるかもしれませんが、実はiDeCoにも欠点やデメリットはあります。
このデメリットは制度によるものもありますし、個人の環境によるものもあります。
ではiDeCoを運用するうえでのデメリットとは何なのか。
デメリットその1:資金拘束力が強い
iDeCoは年金という性格上、原則最低60歳になるまでは運用した積立資産を受け取ることができません。
もう一つ、iDeCoを開設したら原則毎月の積立は解除することができません。つまり始めたが最後、受取りまで積立を行わなければならないという強制力があります。
企業年金のあるなしや、自営業かなどで掛金上限は差異がありますが、最低掛金は5,000円と定められています。これは失業中や収入の大幅な減少でも変わりません。
掛金を支払えないまでになってしまった場合には加入者資格喪失書を提出すれば一時的に掛金の支払いをSTOPすることができますが、気軽に停止再開できない厄介さは長期積み立て運用を行う上で懸念材料ではあります。
iDeCoを脱退して脱退一時金を受け取ることは制度として存在しますが、非常に厳しい条件がありますので、通常はまず完全脱退するのは難しいと考えて差し支えありません。
積み立てた資産がそこにあるのに、今お金が必要だと切迫していてもどうにもならないというもどかしさがiDeCoの運用のデメリットといえばいえるでしょうね。
デメリットその2:選択できる金融商品に制限がある
新NISAは制度改正によって投資できる金融商品も大幅に拡充しましたが、iDeCoは選べる金融商品が比較して極端に少ないのがデメリットです。
しかも証券会社によって商品のラインナップが違うので、iDeCoを始める際の金融機関選びには慎重にならざる負えません。自分が今まで持っていた証券口座がここだからここでいいや、となるのは早計です。
例えばe-MAXIS Slim全世界株式に投資したいのであれば扱っている証券会社はマネックス証券や松井証券となります。SBI証券や楽天証券は類似する商品を扱ってはいるものの同一商品は現在のところは対象外。
もしiDeCoを開設するなら、金融機関の評判評価よりも取り扱っている金融商品を重視するべきだと思います。
NISA口座と銘柄を揃えたいとか、大きな資産を持つ人気の投資商品を買いたいなど銘柄に強いこだわりを持っているのであれば、その商品を取り扱っている証券会社を選定する必要があるでしょう。
金融機関はiDeCoを運営委託されているだけなので、正式な個人型年金の実施者は国民年金基金連合会になります。そのことを念頭に金融機関の口座開設選定を行ってください。
メリットかどうかはわかりませんが、この手の資産運用としては面白い定期預金という商品もあったりします。各証券会社、金融機関のラインナップを吟味してどれが自分に合っているか調べてみましょう。
あと、金融商品選択の際セレクトプランがあり、いくつかの金融商品に分散投資できるようにはなっています。
プランも後から変更でき、リスクをとってアクティブな金融商品を運用したのち、出口に近くなったら手堅い金融商品にスイッチすることも可能なので運用の状況をよく見定めて変更手続きを行うようにしてください。
デメリットその3:口座開設や受取り時、様々な手数料のコストがかかる
iDeCoは金融機関自体は無料で口座管理できるところも多いですが、必ずかかるコストが存在します。
国民年金基金連合会・・・2,829円(加入時手数料)、105円/月(口座管理手数料)
事務委託先金融機関(信託銀行)・・・66円/月(事務手数料)
初期費用として2,829円と毎月171円がコストとして最低限支払われます。
運営管理機関、つまり選択した金融機関によっては運営管理手数料を取る所もあり、コストが増大する可能性もあるので注意が必要。
最もこのコストに関しては上記で述べた税制優遇の中で簡単に相殺されるので、本気でiDeCoに取り組むのであればそれほど気になるデメリットではないということは付け加えておきます。
また、上記は開設時及び運用時のコストですが、出口(受取り時)にも手数料がかかります。
給付事務手数料440円(信託銀行払い)が年金の受取り時に毎回かかり、回数が増えるほどコストがかかります。一時金で受け取る場合は還付手数料が1,048円(国民年金基金連合会払い)、信託銀行に440円手数料として支払うことになります。
年金受取り・・・給付事務手数料440円(信託銀行)/給付毎時
一時金受取り・・・還付手数料1,048円(国民年金基金連合会)、給付事務手数料440円(信託銀行)
コストとしては圧倒的に一時金受取りのほうが負担が軽くなります。どちらをとるかは自身の環境に応じて決めましょう。
デメリットその4:出口戦略の税制優遇には制限がある
メリットの中に退職金及び年金の控除による税制優遇がありますが、実はこれには限度があります。
企業側の退職金制度がある場合、iDeCoと合算した金額から控除されるので、支払われる退職金が多い人は控除の割合が少なくなってしまうという罠があります。
メリットの際に例を挙げた大卒年収500万円60歳定年勤続38年の場合、
800+70×(38-20)=2,060万円
が退職金控除となりますが、企業側からの退職金は大企業なら平均約2,200万円、中小企業なら1,100万円程度(厚生労働省賃金事情等総合調査令和元年より)なので、
2,200万円or1,100万円+iDeCo運用総額-2,060万円=課税対象(所得税、住民税)
となります。
控除から漏れた金額から所得税と住民税を支払うことになり、退職金が控除額を上回るような人にとってはiDeCoのトータル運用額そのままが課税対象となります。これは一時金の場合ですが、年金として分割支給されても公的年金と合算されるので公的年金等控除から漏れた収入は課税対象。
各控除に限界がある以上は仕方のないことですが、人によっては税制優遇の恩恵を感じにくくなるかもしれません。
といっても積立時、運用時の節税効果を考えるとデメリットか、と言われればそうとも言い切れないのも事実。
ただ退職金や年金の多い高収入の人は出口戦略での節税に不満の残ることは間違いないでしょう。
資産運用益が非課税なのに、退職金控除の段階でガッツリとるんかい!って思う方は結構いると思います。これをどうとらえるかが課題。
他、細かいことではありますが口座開設にあたって勤務先への書類届出を行わなければならない等、諸事様々な手続きに手間と時間がかかるのがiDeCoのフットワークの重さだったりします。このご時世にネットのみで素早く完結しないのが悩みのタネ。
まとめ:iDeCoは新NISAに優先すべきか否か?
個人的見解として、どちらを優先すべきかと問われたならば私自身は新NISAを優先的な投資運用制度として選択します。
理由として、
- 資産運用における自由度が段違いに高い
- 選択できる金融商品が桁違いに多い
- 年齢的な投資運用期間の問題として新NISAのほうが入金を短縮できる
という点が挙げられます。
これはあくまで新NISAと比較した検討結果です。仮に旧NISAが続いていたならば違う結論に至ります。
?それはどういう意味ですか?
旧NISAの投資上限は年間40万円の20年積立で約800万円(つみたてNISAの場合)。
小さくコツコツと投資する制度であり、それならばiDeCoと併用することが大いに可能であり、また意義も大きかったと思います。
しかし、新NISAは大幅拡充の投資上限1,800万円。倍以上の投資枠。
しかも年間360万円まで非課税で、最速5年で投資入金を終えることが出来てしまいます。
金融機関よりiDeCo開設の書類を取り寄せたときは半ば開設を決意していましたが、その矢先2022年末の税制改正大綱により、新NISAの大枠発表と近年スタートの可能性が浮上してiDeCoスタートに待ったをかけた経緯がありました。
ただ、現在新NISAに集中するために一時的に開設を見送っているだけ、ということは付け加えておきます。
iDeCoはやれる環境の人はすぐ始めるべき神制度!
- 年齢的に投資可能期間が長く、iDeCoとNISAを少額ずつ気長に積み立てることができる
- 障害保険、死亡保険と割り切って保険商品として運用する
- 退職金が少ない(もしくはない)。公的年金に厚みを持たせたい。
①に関して、iDeCoは期間が長ければ長いほど節税の恩恵が受けられるので、若い人はまずiDeCoを軸に、NISAは余力のあるときだけ気長にやるのがいいと思います。
両方とも少額から始めるというのももちろんアリです。投資に慣れるという点ではその方がベターなやり方かもしれません。
②は実は最も重要かつ有意義な考え方だと思っています。
なぜなら加入者が資産をいくら豊富に残したとしても、いざという時遺族が加入者名義の銀行口座や証券口座を使うのにはいろいろな制限と時間がかかるから。
その点、死亡時の一時金としてなら受取人が早期にお金を受け取れるので、遺族が経済的に一息つくことができます。障害年金として人生のリスクヘッジとしての価値も高いです。
③もとても有効なiDeCo運用の意義です。
退職金が控除額を超えない場合、デメリットからメリットへと変貌するため自力で退職金を作るつもりで積み立てる人にとってはiDeCoをやる価値があります。
公的年金においても同様で、年金の受取額に不安がある人で少しでも上乗せしたい人は退職後の人生プラン的に大きなメリットがあるでしょう。
近年は年収も上がらず、退職金も削られるかそもそも出ない立場の人たちが急増していますし、将来年金が減額されるのも当然のこととして語られています。
年老いてから急にどうにかしようと思っても、お金のことはなかなか思うようになりません。ならばなんとかできる現役時代に少しずつでもやれることをやっておくべき。
企業が給料を上げてくれないということを嘆くよりも、兼職多職がこれから当たり前になる可能性のある時代。
自力で副業を始めて収入ベースを上げつつ、iDeCoやNISAをフル活用してライフシフトに備えましょう。
自分もNISAの見通しがついたり収入に余裕ができた場合、いつでもiDeCoを始める計画はあります。
結論:いろいろ言う人もいるけれどもiDeCoは神制度で間違いはなし。
投資運用益も大切ですが節税に強力な効果があるという制度は思ったよりも希少価値の高いものです。
後は自分の環境、考えをまとめてお得な制度iDeCoを最大限有効活用していきましょう!